カラカラと音を立てて回る糸車。糸を紡いでいるのは、鏡石町を拠点に活動する帽子作家、吉田インコさんです。『インコ帽』という店名で帽子ブランドを展開し、身につけるだけで全身がぱっと華やぐ作品を制作しています。
市販の糸や工業糸を組み合わせたオリジナルの毛糸で編み上げるニット帽には、糸車で自ら紡いだ素材を添えることも。さらに、ラフィアを木型で立体的に成形した麦わら帽のようなハットなど、多彩な技法で作品を生み出しています。
どうして吉田さんはこのような心躍る帽子を制作しているのでしょうか。お話を伺いました。
「できることがこれしかなくて」帽子を選ぶまでの道のり

吉田さんは、最初から帽子作家を目指していたわけではありませんでした。
「本当は洋服のデザイナーになりたかったんですけど、うまくいかなくて」
挫折を経て進学先に選んだのが、文化服装学院のニット科。編み針や編み機を使用した糸の編み方や、ニットのデザインなどを学びました。
卒業後、地元に戻ってきた吉田さん。
「できることがこれしかなくて」
ニット作品の中でも短時間で制作可能な帽子を作り、東京での路上販売やイベント出店を始めました。
中でも転機になったのは、手芸店で開催されたコンテストでした。帽子を出品したところ、入賞したのです。
「そこから帽子でやっていこうって固めたのは大きかったですね」
こうして、帽子作家・吉田インコとしての活動が確立されていきました。
「糸はつながってればいいんだよ」

ニット帽制作は吉田さんの独学です。帽子についての探求を深めていく中で、考え方を大きく変える言葉との出会いがありました。それは、あるニットデザイナーの一言。
「ニットっていうのは、糸はつながってればいいんだよ」
これを聞いて、「すごく、パーンって開けた」のだと言います。
「その言葉を聞いて『つながってればいいんだ』と思って。従来の、編み目記号の通りに編むっていう編み方じゃなくて、自分で一枚布を作ってから立体的に造形していくっていう作り方に変えることができたんです。そういう自由な素材なんだなと思って」
「だから型がある帽子よりもニットの方が面白いなと思うんですよ。素材から作れる面白さっていうのがあって」
そう、楽しそうに話してくれました。
風が吹いてこそ美しい。インコ帽の世界

吉田さんの自由な発想は、その作品にも反映されています。
インコ帽のテーマは『風が吹いてこそ美しい帽子』。写真中央のマネキンが被っているグレーの帽子は、左側にレース部分が垂れさがっています。風が吹くと、この『垂れ』が風できれいになびくのです。
インスピレーションの源となるのは自然の造形。森や林、海に出かけていき、その場で感じるものを作品にしています。まさに、自然の帽子と呼ぶのがふさわしい作品たち。
特に、初期から意識しているのは『楽しい帽子』なのだそう。
「シンプルなものだと物足りないから、楽しい帽子を作れたらいいなって」
個性的なデザインの作品たちは、このような想いから生まれました。
『おばあちゃんの帽子』からの脱却

吉田さんが作家活動を通じて目指すのは、『アートな帽子』を広めること。そのために、ハンドメイドの価値の低さを打開したいのだと言います。
「手作りだから安いっていう価値観が強いなと思って。特に編み物の帽子は『おばあちゃんの帽子』っていうイメージが強いと思ってるんです。それを打開して『アートな帽子』を目指してます」
そのために吉田さんが心がけているのが、
- 良い素材を使うこと
- デザイン力があること
- 唯一無二であること
この3点です。
インコ帽の中心価格は15,000円程度。お客様に納得してもらえるクオリティのものを制作することが、価値の高さや価格にもつながるのだと吉田さんは話します。
50~60代にファッションを楽しんでほしい

インコ帽の購入者は50~60代が中心。吉田さん自身も今年で50歳を迎えます。この年代は「もう年だから」との思いから、ファッションとの向き合い方が消極的になりがちです。
しかし、吉田さんは「本当に好きなファッションを楽しもうよ」と呼びかけます。
個性的な帽子を制作するのは、年齢にとらわれず個性的なファッションを楽しんでほしいというメッセージでもあるのです。
インコ帽の作品は、出来上がってから名前がつくのだそう。「毒蜘蛛」「紫陽花(あじさい)」「夢見る花ベレー」吉田さんならではの豊かな発想で名づけられた作品たちはどれもユニークです。
自由な素材から、自由な発想で生まれる帽子たち。吉田さんの帽子作りの物語は、これからもまだまだ続いていきそうです。
吉田インコさん 詳細情報
6/27(土) てのひらマルシェに出店します
6月27日(土)に須賀川市民交流センターtette(テッテ)で開催される『てのひらマルシェ』に吉田インコさんが出店します。
インコ帽の作品は、見た目はもちろん、被り心地にもこだわって作られています。立体成型によるゆとりあるサイズ感で、これまで「帽子が似合わない」と感じてきた人にもフィットしやすいのが特徴。ぜひ実際に手に取って、その世界観を体感してみてください。
当日は糸車を使った手紡ぎミニ体験も実施します。
| 開催日時 | 2026年6月27日(土)11:00~16:00 28日(日)10:00~16:00 ※吉田インコさんの出店は6/27(土)のみ |
| 場所 | 須賀川市民交流センターtette(テッテ) 福島県須賀川市中町 4-1 |
| 主催 | てのひらマルシェ |
| URL | てのひらマルシェInstagram |





