「趣味だからやれる」木工制作を続けて46年 創作木工夢工房 石川修さん

ひとの物語

リビングの大きな窓の向こうには池があり、たくさんの鯉が泳いでいます。池のほとりには2つの巣箱。玄関のそばには木の枝がぶら下がっていて、よく見るとクルミのかけらが挟まれています。

「冬は餌がないから、ここの餌を取りに来る。そうすると、春になってここの巣箱に巣を作る」
現在、2つの巣箱ではシジュウカラが子育ての真っ最中です。リビングでくつろぎながら、ヒナに餌をやるシジュウカラを眺める暮らし。ここではそんな豊かな時間が流れています。

ここは、須賀川市にある創作木工夢工房 石川修さんのご自宅。「木工は趣味だから」と微笑む石川さんの、これまでの歩みを伺いました。

能面の「型」が嫌になった日

自宅裏の作業場に立つ石川さん

石川さんが木工を始めたのは30歳のとき。木工とは無関係の仕事をしながら、「ものづくりをしたい」という気持ちが徐々に高まっていったのだと言います。

石川さんが最初に選んだのは能面でした。しかし、能面は決められた型に合わせて正確に作らなければならないという制約があります。それが嫌になって、始めたのが彫刻や自由な木工でした。その時に作りたいものを思い通りに作れるのが魅力だと言います。

木工は完全な独学で、他人から習ったことは一度もありません。
「それでは創作になんないから。自分の考えで、自己流でやっていこうと思った」
自分の感性を頼りに、今日も制作に取り組んでいます。

テレビを見ていると、うずうずしてくる

子供向けの作品が並ぶ。 写真提供:石川さん

石川さんが手がける作品は幅広く、ペンダントやバターナイフといった小物から、テーブルやベンチといった大型作品までお手の物。
「赤ちゃんのおもちゃからお年寄りの杖まで、何でも作っている」と笑います。
心の動くままにいろいろなものを作りたい、と考える石川さんにとって、制作の幅を狭めないのはごく自然なことでした。

作業所の様子。制作途中の孫の手が置かれている

「趣味の活動」というと休日にのんびり楽しむというイメージを持ちやすいですが、石川さんは違います。
朝食を済ませると自宅裏の作業場に向かい、昼食のために一度戻るものの、少し休んでまた作業場へ。テレビを見ていても、2~3時間もすると「木工がやりたい」とうずうずしてしまうのだとか。日曜も正月もなく、毎日6時間作り続けるというストイックな生活を送っています。

作業場は手作り。設置されている工具は長い時間をかけて少しずつ集めたものです。この場所で、木材が表情豊かな作品へと生まれ変わっています。

恥ずかしかった販売が今では楽しみに

自宅前に建てられた作品庫。さまざまな過去の作品が保管されている

30歳から木工を始め、定年を迎えるまでは「ただ作るだけ」だったという石川さん。販売を始めたのは、近くの飲食店がきっかけでした。オーナーから、お店の駐車場で行われている対面販売に出店してみないかと誘われたのです。

「始めは(お客さんと)話をするのが恥ずかしくてできなかった」
そんな石川さんですが、その場で知り合った他の出店者に誘われて、その後複数のイベントで出店するようになります。

現在は来場者との会話も楽しみの一つ。
「お客さんとお話しながら販売するっていうのがいいんです」
作品を購入してもらうことは、自分の作品が認められたということでもあります。この喜びを噛みしめながら、現在も各地で販売に取り組んでいるのです。

「仕事と思えばやりたくない」

自宅のテーブル。百年前の土蔵の扉として使用されていた栗の木の板を用いて制作した

これだけ本格的に取り組んでいる石川さんですが、あくまで木工は趣味だと言い切ります。
「仕事と思えばやりたくない」
義務感で取り組むものではなく、あくまで自分の楽しみとして木工を位置づけているのです。

あくまでも趣味との考え方は、作品の販売姿勢にも現れています。
こちらは石川さんが制作したバターナイフ。
「例えばここに30本あるとしたら、10本、15本はタダ(であげる)。人にあげるのが楽しいんだ」
筆者も一本いただきました。これだけサービス精神にあふれたことができるのは、趣味の活動ならでは。

値付けにも、趣味だからこその石川さんの流儀があります。
「材料費がかかっても、うちはその計算、そういうわけかしないんだよね」

聞けば、販売価格は「買う身になって値段をつけている」のだそう。材料費を計算すると、どうしても高くなってしまうからだと言います。
「高くなると売れないの」

赤字が続くと制作を続けられなくなってしまうのでは、と心配になりますが、そのあたりは大丈夫なのだそう。原価を抑え、予算の範囲内でうまくやっているのだそうです。

アキレス腱断裂、残ったのは木工だけ

イワナの剥製と能面がリビングに飾られている

石川さんには、木工のほかにもう一つ、渓流釣りという大切な趣味がありました。リビングにはこれまでで一番大きな獲物だというイワナの剥製が飾られています。また、魚の姿を掘った彫刻作品も複数あります。
しかし、昨年渓流釣りに出かけた際にアキレス腱を断裂。現在もリハビリに励んではいるものの、76歳という年齢もあり、もう山に行くのは難しいと考えています。

「残っているのは木工だけ」
だからこそ、木工という存在が人生の大きな支えとなっているのです。

手作りの庭、そして木工のある暮らし

シジュウカラの巣箱と大きな岩が並ぶ池が庭を彩っている

リビングから眺められる庭の池や、シジュウカラが羽を休める巣箱。これらはすべて石川さんが長い時間をかけて自分の手で作り上げてきたものです。

自分が心地いいと思える環境をみずから整え、その中で大好きな木工に没頭する。
「趣味だからやれる」という言葉の裏には、誰にも縛られない、自由で豊かな人生の誇りが詰まっていました。

創作木工 夢工房 詳細情報

住所福島県須賀川市滑川字東町159-1
電話番号090-3752-9633

5/23、24「モノ作りびとフェア」で創作木工 夢工房が出店

画像提供:モノ作りびとフェア実行委員会

石川さんの作品は、各地で開催されるイベントで直接購入できます。
5/23(土)、24(日)には、伊達市 つきだて花工房で開催される「モノ作りびとフェア」で創作木工 夢工房が出店。ぜひ石川さんと実際に話をして、その作品を手に取ってみてください。

開催日時2026年5月23日(土) 10:00~16:00
     24日(日) 10:00~15:00
場所つきだて花工房
(福島県伊達市月舘町下手渡字寺窪7 つきだて花工房もりもり内)
入場料無料
主催モノ作りびとフェア実行委員会
URLモノ作りびとフェア実行委員会
つきだて花工房
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